「自然派ワイン」「オーガニックワイン」「ビオワイン」「無添加ワイン」など、ナチュラルな印象のワインをよく見かけるようになりました。
今回は自然派ワインの魅力や特徴、取り扱うときの注意点にくわえて、似た意味で使われる「オーガニックワイン」「ビオワイン」「無添加ワイン」についても解説しますので是非参考にしてください。
自然派ワインとは?
自然派ワイン(仏語:Vin nature)は、ブドウの栽培・発酵・瓶詰までの工程を、できるだけ人工物を使わず自然に近い条件で製造されているワインの総称です。
大枠のカテゴリーを指しているため、「自然派ワイン」という言葉自体に法的な定義はなく、考え方やとらえ方は十人十色。
自然派ワインの魅力や、同じような意味で使われる「オーガニックワイン」「ビオワイン」「無添加ワイン」について見ていきましょう。
自然派ワインの魅力
- 有機栽培(または無農薬栽培)したブドウを原料に使う
- 発酵には天然酵母を使う
- ろ過を行わない(または最小限にとどめる)
- 酸化防止剤の添加を最小限にする
- ブドウを栽培する土地や環境への配慮
オーガニックやナチュラルなものが好まれる近年、自然派ワインも注目されていますね。
ブドウを栽培する土地や環境への配慮も一段とこだわる必要があるので、サステナブルな取り組みとしての一面も持っています。
ワインはテロワール(土地の風土)を宿すお酒と言われています。
ブドウを生む土壌や気候が瓶の中に閉じ込められていて、それがワインの個性となり、魅力となるわけですね。
有機栽培や無農薬ブドウを使い、栽培環境にも配慮した自然派ワインは、特にこのテロワールを楽しむのに最適。
酸化防止剤の使用を最小限にとどめていることも、ナチュラル思考の人を中心に人気がある理由の一つです。
3種の有機栽培
- リュット・リゾネ
- ビオロジック
- ビオディナミ
一言に「有機栽培」といっても、その方法は大きく3種類に分けられます。
リュット・リゾネ<ビオロジック<ビオディナミの順に規定が厳しくなりますが、いずれも畑の土壌を自然物を使うことによって活性化し、よりよいブドウを収穫するのが目的です。
EUの法律では、定められた規定を3年以上守らないと有機栽培の認証資格を得ることができません。
認証資格を持つ生産者が、有機栽培のルールに沿ってワイン造りをした場合のみ、「有機ワイン」の表記が可能です。
リュット・リゾネ
日本語で「減薬農薬農法」と訳されます。
農薬や化学肥料を最小限にとどめた方法ですが、有機ワインと表示することはできません。
ブドウに病気が広がった場合にも少量の薬品を使って対処します。
“どこまでが最小限の農薬か”の定義がなく、生産者判断で「リュット・リゾネで造りました!」と言えてしまうため賛否両論。
有機農法の中では一番多い手法ですが、「自然派ワイン」とは呼ばないことも多いです。
ビオロジック
ビオロジック農法では、農薬・化学肥料を一切使用しません。
遺伝子組み換えも禁止されており、使える肥料も認証を受けた有機肥料のみ。
ブドウが病気になったときはハーブなどを調合したものを使い、殺虫剤のような人口薬品は使いません。
一般的な有機栽培のイメージはこれが近いです。
ビオディナミ
有機栽培の中でルールがもっとも厳しいのがビオディナミ。
英語では「バイオダイナミクス」と呼ばれます。
オーストリア出身の思想家「ルドルフ・シュタイナー」が提唱しました。
基本的にはビオロジックと同様の手法を用いますが、種まきなどのブドウの栽培にかかわる作業を月と地球の位置関係といった天体の動きに合わせて行うのが特徴。
肥料には砕いた水晶を詰めた雌牛の角を地中に埋めた後に、その水晶を希釈して作る調合剤を使用します。
ブドウが病気になったときにはビオロジックと同様、ハーブなどを調合したもので対処します。
天体の動きや宗教的な色の強い調合剤など、非科学的なことも多いので、ビオディナミを批判する生産者も多いです。
しかしロマネコンティなどの有名ワインにも取り入れられている方法で、非化学的だからと一蹴するには早計かもしれません。
酸化防止剤と二日酔いの頭痛について
以前より、ワインに添加される酸化防止剤の亜硫酸(二酸化硫黄)が、二日酔いの頭痛の原因となっている説があります。
そのため亜硫酸の使用を極力控えた自然派ワインは、「二日酔いで頭痛になりにくい」というのが定番キャッチコピーの一つですね。
しかし亜硫酸と頭痛の関係性について科学的な立証はなく、あくまで飲んだ人の体感の域を出ていません。
亜硫酸は大量摂取すると有毒ですが、ワインに添加されるのは他食品に比べてもごく少量(例:ドライフルーツに含まれる量の1/10以下)で人体に影響はない考えられています。
メディアやネットの情報により必要以上に悪者扱いされている亜硫酸ですが、特にワインを国際流通させるときには劣化を防止するために必須なもので、古代ローマ時代からワインに添加されています。
自然派ワインにも最低限の亜硫酸が添加されるものが多いですね。
例外として、重度の喘息がある方はごく少量の亜硫酸でも発作が出る場合があり、お医者さんからもワインを控えるように言われることがあります。
近年考えられている頭痛の原因
近年、赤ワインと一部の白ワインに含まれる「ヒスタミン」「チラミン」などの生体アミンが二日酔いの頭痛の原因になりえると考えられるようになりました。
白ワインを飲んでも頭痛がなくて、赤ワインだと頭痛が残る場合には、亜硫酸ではなくこれらの物質を疑ってもよさそうです。
頭痛の要因になるこれらの生体アミンは、自然界の乳酸菌を用いたマロラクティック発酵(MLF)で生成される場合があります。
自然派ワインの生産者はMLFの際にも自然にまかせることが多いので、頭痛の原因が通常より多い可能性も。
MLFについては「【リンゴ酸→乳酸】マロラクティック発酵の仕組みや出来上がるワインの特徴」で解説しているので参考にしてください。
亜硫酸以外の酸化防止剤もある
酸化防止剤には亜硫酸のほかに、ソルビン酸、アスコルビン酸(ビタミンC)が使われることもあります。
ソルビン酸はケチャップなどにも入っていますし、アスコルビン酸に至ってはただのビタミンCです。
酸化防止剤の種類はワインの裏ラベルに書いてあるので、亜硫酸が気になる人はそれ以外の酸化防止剤のものを選ぶのも手ですね。
いずれにしても自分の身体に合う・合わないがあるので、「自然派ワインなら翌日も問題ない!」という人は自然派ワインを選ぶようにしましょう。
自然派ワインのデメリット
- 価格が高価
- 品質にばらつきが出やすい
- ビオ臭と呼ばれる特有の匂い
自然派ワインは原料ブドウにかかるコストが高く、生産量も増やしづらいため価格が高価になりやすいです。
限りなく自然にこだわっているコンセプト上、品質を安定させることが難しく、ヴィンテージが異なると同じワインでも全く違った印象になることも多いです。
亜硫酸が極端に少なく、ろ過をしないことによって発生する「ビオ臭」もポイント。
自然派ワインには硫黄のような土のような、そんな独特な香りがあり、ブラインドで飲んでも嗅いだ瞬間に「自然派ワインだ」とわかるくらいハッキリわかります。
この香りに馴染めるかどうかも、自然派ワインを楽しめるかどうかの分かれ目になるでしょう。
オーガニックワイン・ビオワイン・無添加ワインについて
自然派ワインと似た意味で使われる「オーガニックワイン」「ビオワイン」「無添加ワイン」についても見ていきましょう。
オーガニックワイン
化学肥料を使わず、ブドウの遺伝子組み換え、化学薬品や添加物などの使用が制限されたワインで、自然派ワインの一つです。
昔ながらのワイン造り(ビオロジック農法)をしたワインとも言えますね。
発酵には天然酵母を使用します。
オーガニックワインとしての製造規定を満たしたワインには、オーガニック認証のマークを表示できる国もあります。
ビオワイン
「ビオワイン」は日本で生まれた造語で、国際的には通じない日本独自の表現です。
ビオは英語の「バイオ」、日本語で「生命」を意味していて、日本では有機栽培のブドウを原料としたワインの総評として使われています。
オーガニックワインと違い、有機JAS認定を取得する必要がなく、発酵には天然酵母以外に乾燥酵母を使うこともあります。
無添加ワイン
スーパーなどでよく見かける「無添加ワイン」は、添加物(主に酸化防止剤)が添加されていないワインのことです。
原料ブドウについては規定がないので、有機栽培や無農薬栽培とは限りません。
ワインの保存料となる酸化防止剤が入っていないので、代わりにワインを加熱して滅菌します。
さらにフィルターで滓や酒石をろ過するため、ワインの瓶内熟成は進みません。
ワインは様々な成分によって複雑味がもたらされますが、無添加ワインはそれらが除去されているので、単調な味わいになりやすいのも特徴です。
自然派ワインの認証マーク
有機栽培やビオディナミに関する認証団体は各国に多くあります。
代表的なものを一覧化したので参考にしてください。
団体の認証を受けるかは任意で、マークの有無でワインの品質を判断することはできません。
多くの自然派ワイン生産者は、認証を取ることなく自然派ワインの生産を実施しています。
認証マーク | 認証団体名 | 備考 |
ユーロリーフ | EU有機認証 EUの有機農業規則に沿って生産されたことを証明するマーク |
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アグリキュルチュールビオロジック (AB認証) |
フランス農務省による認証マーク 土壌・栽培・醸造の過程で農薬や化学肥料を一切含まない |
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エコセール | フランス発祥で、世界80か国以上に広がっている認証団体のマーク 有機農法か自然農法で栽培されたブドウを使用する |
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デメテール | ドイツ発祥のビオディナミ認証団体 ビオディナミ農法を7年以上実施しないと認証されない厳しい規定 |
|
ビオディヴァン | フランス発祥のビオディナミ組合による認証マーク 名門生産者も加盟している ビオの適正検査はエコセールに委託している |
自然派ワインを飲むときのポイント
ワインはもともとデリケートな飲み物ですが、自然派ワインは輪をかけて配慮する必要があります。
保存時の温度は14℃以下の冷暗所
保存料が少ないため気温の変化に弱いので、14℃以下の冷暗所で、できるだけ温度変化の少ない環境で保存しましょう。
温度設定をしたワインセラーや、冷蔵庫の野菜室でもいいです。
滓が多いのでゆっくりグラスに注ぐ
ろ過せず製造される自然派ワインは、瓶の底に滓が溜まっていることが多いです。
不純物をグラスに注いでしまわないように、ゆっくりと注ぎ入れるようにしましょう。
ワインの上手な保管方については「【ワインエキスパート直伝】家飲みでワインを一段とおいしく楽しむ方法」も参考にしてください。
最後に
- 「自然派ワイン」はできるだけ自然に近い条件で製造されたワインの総称
- ワインの魅力の一つである「テロワール」を最大限感じることができる
- ブドウ栽培にこだわっているため価格が高くなりやすい
- 「ビオ臭」という固有の匂いがある
- 有機栽培には「リュット・リゾネ」「ビオロジック」「ビオディナミ」の3タイプがある
- 「オーガニックワイン」は自然派だが、「ビオワイン」と「無添加ワイン」は自然派とは限らない
- 有機栽培の認証マークがついているものもある
- 普通のワインよりデリケートなので保存時や飲む時に注意が必要
今回は「自然派ワイン」について解説しました。
オーガニックな食品が注目されている昨今、自然に近い状態で造られる自然派ワインが話題に上がるのは当然です。
認証マークはあるものの、マークを表示するのはまだまだ少数で、多くの生産者は認証マークを表示せずに自然派ワインを造っています。
自然派ワインにこだわって飲みたい人にとっては探すのが非常に大変なのが難点ですが、取り扱うときの注意点なども含めて、この記事を参考にして自然派ワインを楽しんでください。
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