このサイトにはプロモーションが含まれています。

【リンゴ酸→乳酸】マロラクティック発酵の仕組みや出来上がるワインの特徴

今回はマロラクティック発酵(MLF)について解説します。

MLFをするとワインの酸味がまろやかになる効果がありますが、するかどうかは生産者が求めるスタイルによって任意です。

ほとんどの赤ワインと一部白ワインで行われますが、ときにMLFがネガディブな効果になってしまうこともあります。

MLFがワインの味わいに与える影響は大きく、仕組みが分かるとワインのテイスティングが一段と楽しくなりますが、ワインの資格試験などでも詳しくは勉強しないのが実際のところ。

今回はMLFの仕組み、メリット・デメリットなど詳しく解説するので、ワインを一歩深く勉強する足掛かりにしてください。

マロラクティック発酵(MLF)とは

  • リンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解すること
  • アルコール発酵後に行うことが多い

リンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解すること

マロラクティック発酵 (malolactic fermentationマロラクティックファーメンテイション) とは、ワインに含まれるリンゴ酸を、乳酸菌の働きによって乳酸 と炭酸ガスに分解させることをいいます。

malic aciマロアシッドd(リンゴ酸)、Lactic acidラクティックアシッド(乳酸)、Fermentationファーメンテイション(発酵)のイニシャルをとってMLFと表現されたりします。

Iseya
ドイツ語ではBiologischer Saure Abbauといい、イニシャルを取ってBSAと表現されます。

マロラクティック発酵の化学反応

マロラクティック発酵の化学式は以下です。

リンゴ酸:COOH-CH2-CHOH-COOH

乳酸:CH3-CHOH-COOH+CO2

リンゴ酸に含まれるCOOHが2つなのに対し、乳酸になると1つだけになっていますね。

COOHはカルボン酸の官能基(カルボキシル基)で、酸味成分の元です。

MFLによって酸味成分の元が減るので、pH値が上がる(=アルカリ性に寄る)ことになります。

Iseya
よっぽど興味がない限り、この化学式は覚えなくてOKです。

生産者の任意で、アルコール発酵後に行うことが多い

マロラクティック発酵は、アルコール発酵後に行われます。

まれにアルコール発酵と同時進行で行う場合もありますが、一般的ではありません。

ワインを醸造する上でアルコール発酵は必須ですが、マロラクティック発酵は生産者の求めるワインのスタイルによって任意となっています。

温暖な地域では意図せず自然にマロラクティック発酵が起こってしまうこともあり、そういったワインは劣化品として扱われることが多いです。

最近はワインだけでなく、日本酒にも取り入れる研究も進んでいます。
参考:マロラクティック発酵による新タイプ純米酒の開発(PDF)

マロラクティック発酵の効果

  • ワインの鋭い酸味がまろやかな酸味になる
  • バターや乳製品の香りが生まれる
  • 微生物学的にワインの品質が安定する

マロラクティック発酵はスターターと呼ばれる乳酸菌を人工的に投入してスタートする場合と、自然の乳酸菌によって勝手に起こる場合があります。

MLFを経ることで様々なメリットがありますが、やりすぎてしまうとワインが欠陥品になる危険性があります。

そのため生産者はタイミングを見極めてMLFを終了させなくてはなりません。

安全にMLFを止めるには、必要量の亜硫酸を添加してワインの温度を下げ、澱引きします。

ワインの鋭い酸味がまろやかな酸味になる

マロラクティック発酵を行うと、ブドウに含まれるリンゴ酸由来の鋭い酸味が和らぎ、乳酸由来のまろやかな酸味に変化します。

Iseya
先述の化学式で酸味成分の元であるCOOHの数が減っているのが理由です

ブドウのリンゴ酸は成熟して糖度が上がるにつれて減少するので、成熟度が高い(=リンゴ酸が少ない)ブドウから造られたワインの場合はMLFがあまり進まず、酸味の変化は少なくなります。

バターや乳製品、バラの香りが生まれる

マロラクティック発酵によって、バターやヨーグルトのような香りバラの香りが生まれます。

香り成分が増えることによってワインの香りに複雑さをもたらしますが、過度に生成されるとオフフレーバー(不快臭)になってしまいます。

マロラクティック発酵によって生成される香り成分

  • ダイアセチル:バターや乳製品の香り
  • βダマセノン:バラのような香り

微生物学的にワインの品質が安定する

マロラクティック発酵を行うと、ワインの品質が微生物学的に安定します。

乳酸菌がワインの中の栄養素を使うことで、その他の雑菌が繁殖しづらくなることが理由です。

一方で、ワインの酸度は保存寿命や色にも影響する重要な要素。

必要以上に酸度が下がってしまった場合には、酸(一般的には酒石酸)を添加して酸度を上げ直すこともあります。

マロラクティック発酵はどんな時に行う?

  • ほぼすべての赤ワイン
  • ニュートラル品種の白ワイン
  • 一部のスパークリングワイン

ほぼすべての赤ワイン

例外を除いて、全て赤ワインにはマロラクティック発酵が行われます

強すぎる酸はタンニンや果実味と相性が悪く、MLFによって口当たりが柔らかくなり、香りが複雑化する要素は赤ワインと相性がいいからですね。

一方で、ボージョレで有名なヌーボー(新酒)には若々しさが求められるため、マロラクティック発酵しないことが多いです。

Iseya
ボージョレヌーボーにフレッシュな酸味があるのはMLFしてないからなんですね

ニュートラル品種の白ワイン

白ワインのなかでも、ニュートラル品種に分類されるブドウ品種でマロラクティック発酵することが多いです。

ニュートラル品種で有名なものはシャルドネミュスカデなどですね。

ブルゴーニュのシャブリのように、冷涼な産地で造られた場合にはブドウの酸度が高いので、味わいのバランスを取るためMFLされます。

マロラクティック発酵で生まれる風味は樽香との親和性が高いため、新樽熟成とセットで行われることも多いです。

一方で、リースリングやソーヴィニヨンブランなどの特徴的な香りを持つ品種(アロマティック品種など)にはMLFしないのが基本。

リンゴ酸の持つシャープな酸味がポジティブな特徴であることと、MLFによって生まれる香りがブドウ由来の香りと相性が悪いためです。

Iseya
温暖な地域ではブドウがよく熟す(=リンゴ酸が少ない)ので、ニュートラル品種でもMFLしないこともあります

一部のスパークリングワイン

シャンパーニュなどのスパークリングワインにもMLFすることがあります。

酸味が柔らかく香りの複雑味が増すため、万人受けしやすくなるのがメリット。

一方で酸度が下がり保存性が落ちてしまうことから、長期熟成タイプのシャンパーニュにはMLFしないでつくるものが多いです。

マロラクティック発酵したワインは頭痛になる?


近年、「ヒスタミン」「チラミン」などの生体アミンが二日酔いの頭痛の原因になりえると考えられるようになりました。

自然界にいる乳酸菌を用いたMLFでは、発酵の際にこれらの物質も同時に生成されることがあります。

一方で、人工的に添加するスターターと呼ばれる乳酸菌からは、これらの生体アミンは生成されません。

自然派ワインの造り手はMLFも自然の乳酸菌を用いることが多いので、生体アミン由来の頭痛になる可能性はあります

「自然派ワインは頭痛になりにくい」というキャッチコピーがありますが、もしかすると自然派ワインのほうが頭痛の要因が多いと言えるのかもしれません。

いずれにしても作用する乳酸菌の種類によるので、実際に飲んでみてどうなるか、で各々判断してくださいね。

関連記事

ワイン初心者 自然派ワインってよく聞くけど具体的に何? Iseya オーガニックっぽいワードですが、具体的なことはあまり知られていませんよね 「自然派ワイン」「オーガニックワイン」「ビオワイン」「無添[…]

Iseya
こうして書くと「反自然派」と思われるかもしれませんが、筆者は「飲んでおいしければなんでもOK!」というスタンスです

最後に

  • マロラクティック発酵はリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解すること
  • アルコール発酵後に行うことが多い
  • ワインの鋭い酸味がまろやかな酸味になる
  • バターや乳製品の香りが生まれる
  • 微生物学的にワインの品質が安定する
  • ほぼすべての赤ワインと、一部白ワインやスパークリングワインに行う
  • 鋭い酸味や特徴的な香りを持つ品種には行わない
  • 自然界の乳酸菌を用いたMLFは頭痛の要因となる生体アミンが生成される可能性がある

今回はマロラクティック発酵について解説しました。

ワインの販売ページを見てもMLFしてるかどうか書いてないことも多いですが、ワインに与える影響は大きいです。

仕組みを知ると、例えば赤ワインからヨーグルトのような香りを見つけたときに、「あぁこれがマロラクティックの香りか」なんて気付けて楽しくなりますね。

白ワインならシャブリの場合ほとんどがMLFするので、シャブリを意識して飲んでみるのがオススメです。

家飲みでワインをおいしく楽しむ方法を紹介↓

関連記事

今回はワインの家飲みについてです。 コロナ禍になって、ワインなどのお酒を家飲みする人が増えましたね。 難しいイメージのあるワインですが、家でも簡単にできるいくつかのコツを実践するだけで一層おいしく楽しむことができます。 筆[…]

初心者にオススメのワイン勉強法↓

関連記事

ワイン初心者 ワインの勉強は何から始めればいいですか? Iseya 効率のいいやり方を紹介します! 今回は、これからワインの勉強をスタートしようと考えている人に向けた記事です。 初心者は何か[…]

NO IMAGE

ワインを勉強してみませんか?

ワインを勉強すると、ただ飲むだけよりも味わい深く楽しめるようになります。
奥が深く一生付き合える趣味にもできるのでとてもオススメ。
最初は簡単なことからスタートしましょう。

CTR IMG