今回は近年話題のオレンジワインについて解説していきます。
最近ワイン売り場で「オレンジワイン」を見かけることが増えました。
「オレンジワインっていうくらいだから、オレンジで造ったワインじゃない?」
なんて思ってしまうそのネーミングですが、ほかのワインと同じくブドウを原料にしたワインです。
「オレンジで造ったワイン」と思っている人でも、この記事を読み終えるころには正しくオレンジワインの知識が身についていると思います。
後半ではオススメのオレンジワインも紹介するので、興味がある方はお試しください。
オレンジワインとは
オレンジワインは特殊な製法で造った白ワインのことを指します。
たまに「オレンジワインってオレンジを使ったワインかな?」と勘違いしている人がいますが、原料は白ブドウです。
今のところ法律上でワインの色は「赤」「白」「ロゼ」しかなく、オレンジワインはあくまで白ワインの一種として分類されます。
しかし一般的な白ワインよりも見た目の色合いがオレンジ色に近いことから、最近は“オレンジワイン”と呼ばれて地位を確立しつつあります。
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オレンジワインの造り方
オレンジワインの造り方は一般的な白ワインと異なります。
白ワインは通常、ブドウから果皮や種を除去し、果汁のみを抽出してからアルコール発酵して造ります。
果汁には色がないので、黒ブドウから造っても白ブドウから造っても白ワインになります。
しかしオレンジワインは、ブドウの果皮や種を除去せずに、すべて混ざったままでアルコール発酵を行います。
実はこれは赤ワインの造り方。赤ワインは、黒ブドウの果皮が持つ色素がワインに溶け込むことで赤ワインになります。
そして白ブドウを使ってこの造り方をすると、白ブドウの果皮の色素がワインに溶け込んで“オレンジワイン”となるわけです。
この製法は新しいものではなく、むしろ紀元前から行われていた原始的な白ワインの造り方です。
つまりオレンジワインこそが元祖白ワインで、現在流通している一般的な白ワインは技術の進歩によって生まれたもの、ということになりますね。
味わいの特徴
製法が異なれば当然味わいも異なります。
オレンジワインには通常除去されてしまう果皮や種の成分がワインに溶け込むため、白ワインと比べてタンニン(=渋み)の強い味わいがあります。
赤ワインと同じ製法なので、「赤ワインに似てるな」と感じる人もいるでしょう。
ほのかにアプリコットの香りが出ることも特徴です。
オレンジワインの歴史
オレンジワインの製法は紀元前6000年、東ヨーロッパのジョージア(旧グルジア)で生まれました。
ジョージアはワイン発祥の地と言われていて、醸造の際にクヴェヴリという土器を使ってワインを造っていました。
瓶やコルクはもちろん、樽も使わないので(というか当時はないので)、ワインを密閉することができません。
きっと現代のように果汁だけで発酵させていたら、すぐに酸化が進んでおいしい白ワインにはならなかったでしょう。
果皮や種に含まれるタンニンが抗酸化作用をもつため、一緒に発酵させることで密閉技術がない時代からおいしいワインを造ることができた、と考えられますね。
現代ではステンレスタンク熟成を使うオレンジワインもありますが、クヴェブリ熟成よりも素直でわかりやすい味わいになることが多いです、
主なオレンジワインの産地
オレンジワイン自体は世界各地で広く生産されていますが、特に代表的な2つを紹介します。
ジョージア
オレンジワインと言ったらまずはジョージアです。
紀元前6000年に生まれたクヴェヴリによるワイン造りが現代でも行われています。
オレンジワイン自体は果皮と種を一緒に漬け込めばいいので世界各地で造られますが、クヴェヴリで造るオレンジワインはジョージア特産。
現代の製法に比べて大量生産ができないため価格は高くなりがちですが、クヴェヴリ製造だからこそ生まれる複雑で独特の味わいがあるのが特徴です。
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イタリア
イタリアのフリウリヴェネチアジューリア州でも、伝統的にオレンジワインが造られます。
アンフォラという、こちらも太古からワイン造りに使われていた土器によって熟成されるのが特徴。
ジョージアがワイン発祥の地とするなら、イタリアはローマ帝国の進軍によってワインを世界各地に広めた国です。
当然フリウリのオレンジワインも、世界にオレンジワインを広めたきっかけになった考えていいでしょう。
ジョージアと比べるとスッキリしていて、オレンジワインを初めて飲む人でも楽しみやすいです。
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オレンジワインに使われるブドウ品種
オレンジワインは独特の製法によるもので、白ブドウであれば使用する品種は問いません。
世界各地で造られることから、「オレンジワインと言えばこの品種」とならないのも現実。
ただ、それでも代表的な品種といったら?というと「ルカツィテリ」がまず挙がるでしょう。
ルカツィテリはオレンジワイン発祥の地、ジョージアの代表的なブドウ品種。
花や柑橘の香りを持つ、アロマティック品種に分類されます。
果汁のみを抽出する近代的な製法では個性が生かしきれませんが、果皮と種子を一緒に醸造する昔ながらの製法をすることで、力強いワインになります。
ルカツィテリがアロマティック品種なので、当然その他のアロマティック品種もオレンジワインに向いていると考えられますね。
近年流行している理由
オーガニックなイメージ
オレンジワイン自体は紀元前から存在していましたが、近年になって急に注目された印象があります。
それはなんといっても「ナチュラル(=自然派)なイメージ」があるでしょう。
昔ながらの製法であるオレンジワインは、近代技術を使わない(または制限した)オーガニックな印象がありますね。
「オレンジワインだからオーガニック」という単純な話ではありませんが、自然派らしさを押し出した売り込み方をされることが多いです。
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個性的な料理とのペアリング
むしろオレンジワインの面白さは、その個性的な味わいを活かす料理とのペアリングだと思います。
通常の白ワインとはマッチングさせにくい料理とのペアリングでも、オレンジワインならうまく組み合わせることができるでしょう。
オレンジワインは白ブドウを使って赤ワインの製法をしたワインなので、幅広い料理を合わせやすいのも特徴です。
アロマティック品種はスパイシーな料理と相性がいいため、アロマティック品種を使うことが多いオレンジワインにもカレーなどを組み合わせると上手く行くことが多いです。
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オレンジワインの上手な飲み方
オレンジワインを飲むうえで注意したいのが、飲むときの温度です。
一般的な辛口白ワインは7~10度前後とされますが、果皮や種の成分を含むオレンジワインはもっと高め。
赤ワインを飲むときに近い、15℃前後の温度に調節するのがオススメです。
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オススメのオレンジワイン
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最後に
- オレンジワインは特殊な製法を用いた白ワイン
- ジョージアで紀元前6000年から造られていた
- 幅広い料理とマッチングさせやすい
- 飲むときは少し高めの温度で
今回は近年話題のオレンジワインについて解説しました。
オレンジワインは昔ながらの製法で造られる白ワインです。
原産はジョージアですが、近年では世界各国で造られています。
料理に合わせやすい特徴もあって飲みやすいのも人気の秘訣。
売り場で見かけることも増えたので、興味がある人は是非お試しください。
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