今回はリースリングについて解説します。
リースリングはシャルドネ、ソーヴィニヨンブランと並んで白ワイン用ブドウ3大品種と言われますが、栽培条件や生産量が少ないので飲んだことがない人も多いかもしれません。
特徴的な酸味と白い花の香りや石油の香りが特徴的で、特に寒い地域で真価を発揮します。
この記事ではリースリングの特徴や合わせる料理、リースリングを使ったオススメワインを紹介しているので、ワイン選びの参考にしてください。
最近はコンビニワインでもリースリングの香りをしっかり楽しめるものもありますね!
リースリングの特徴
リースリングの房は小さく、厚い果皮を持ちます。
熟すと茶色の斑点が出るのも特徴。
芽吹きが遅い割に早熟(とはいえドイツで栽培される品種の中では晩熟)なので遅霜の被害を受けにくく、病気に弱いものの寒さに強いため寒冷地で多く栽培されます。
樹木の生命力が強いのでもともとの収量が多く、そのうえ収量が増えても品質が落ちにくいという特性があります。
開花時の降雨量によっては花が地面に落ちて果実にならず、流れて行ってしまうことがあったため、ドイツ語のriesen(=流れる)という単語から
シャルドネ、ソーヴィニヨンブランと並ぶ白ワイン用ブドウの三大品種
リースリングはドイツやフランス・アルザス地方など、冷涼な地域で多く栽培されるブドウ品種です。
辛口から極甘口までこなす豊かなバラエティを持ち、特にドイツで造られる極甘口は世界最高品質の一つ。
シャルドネ・ソーヴィニヨンブランと並んで白ワイン用ブドウ品種の三大品種に数えられますが、日本での知名度は他2品種より一歩下がる印象です。
しかしピノノワールにも負けず劣らずの気難しさと、テロワールにきわめて強く影響される特徴を持ち、高級白ワインにも使われることから「上品で高貴なブドウ」と称されたりします。
一般的に他品種とブレンドせず、単一で造られることが多いです。
豊富な酸味と白い花やハチミツなどの甘い香り&ペトロール香
リースリングは、横に伸びる特徴的な酸味と、白い花や桃、リンゴなどの甘い香りを持ち、アロマティック品種に分類されます。
「鋼のような」とも表現される豊富な酸によって長期熟成も可能。
熟成してもフレッシュさを損なわず、スモーキーさだったりハチミツの香りが発展していきます。
瓶内熟成させたり、成熟度の高いリースリング(=高品質なタイプ)からは石油の香り(ペトロール香)も感じられ、ブラインドテイスティングでリースリングを判別する重要な要素の一つでもあります。
ペトロール香はワイン初心者にとってはネガティブに感じることもあり、生産者によってはペトロール香を出さないように作ることも。
しかし飲みなれてくるとクセになってきて、むしろペトロール香をもっと感じたい!となってしまうのもリースリングの魅力だと言えます。
冷涼で水はけのいいやせた土壌で特に高貴なリースリングが生まれる
リースリングは「冷涼な気候」と「やせた土壌」という、過酷な条件下で真価を発揮します。
収量によって品質は落ちないものの、高品質なワインを造る場合には選定して凝縮感を高めるのが一般的です。
通常はブドウが成熟すると酸度が下がり、糖度が上がっていきますが、栽培環境の条件が整ったリースリングは糖度が上がっても酸度が下がりにくいのも特徴。
これによって酸と糖を併せ持った、高品質で長期熟成に耐えうる甘口ワインを造ることができるわけです。
少し温暖なエリアでも栽培自体は可能ですが、リースリングの個性が発揮されず単調な味わいになりやすいので冷涼な地域での栽培が中心です。
高品質なリースリングとペトロール香の関係
リースリングの特徴であるペトロール香は、「1,1,6-トリメチル-1,2-ジヒドロナフタレン (TDN)」という化合物によって発生しています。
TDN含有量が増える要因は、以下4点があげられます。
- よく熟したブドウを使う
- 日照時間が長い
- 水分量が少ない
- 酸が多い
つまり選定して凝縮したブドウを使い、日照時間を確保できた畑で、水分量の少ないやせた土壌を持ち、酸がしっかり残る冷涼な場所(=リースリングにとってベストな栽培条件)でこそ、ペトロール香は発生すると言えます。
リースリングの醸造
アロマティック品種なので新樽熟成は行わない
リースリングには品種自体が持つ花や果実の香りがあります。
そのため新樽を使って樽の香りをつけることはあまりありません。
樽熟成をする場合でも、香りがつかないように古樽を使う(=昔ながらの製法)ことが多いです。
特徴的な酸を生かすためマロラクティック発酵は行わない
リースリングの真骨頂である酸味を生かすため、酸味をまろやかにしてしまうマロラクティック発酵は行わないのが一般的です。
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産地ごとのリースリングワインのスタイル
- 冷涼な地域:リンゴなど木に熟す果実の香りとはっきりとした酸
- やや温暖な地域:柑橘や桃の香り
- 温暖な地域:ライムの香り
リースリングはテロワールの影響を大きく受けるブドウ品種なので、産地ごとに特徴が異なります。
ドイツ
- 繊細で横に伸びるような酸
- 辛口から極甘口まで
ドイツは世界で栽培されるのリースリングのうち、6割を栽培するリースリング大国。
13の地域がワイン産地として認定されていますが、そのうちモーゼルとラインガウが二大産地と呼ばれます。
日本でドイツワインと言えば甘口タイプが有名ですが、実は辛口タイプのほうが生産量は多いです。
かつてはブドウ栽培の北限と言われた冷涼な気候から、果実味とミネラルのバランス感が優れたワインが造られます。
甘口ワインは原料ブドウ果汁の糖度によって格付けがされており、最上位の「トロッケンベーレンアウスレーゼ」は世界三大貴腐ワインに数えられる最高峰のワイン。
アルコール度数は控えめですが、高い酸と糖度によって長期熟成が可能で、50年~100年という超・長期熟成に耐えるものもあります。
「ゼクト」というスパークリングワインにも用いられていて、リースリングはドイツを代表するブドウ品種と言えるでしょう。
②アイスヴァイン
③ベーレンアウスレーゼ
④アウスレーゼ
⑤シュペトレーゼ
⑥カビネット
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フランス・アルザス地方
- 辛口
- 果実味とミネラル豊かな味わい
ドイツとライン川をはさんで隣に位置するフランス・アルザス地方でも、リースリングは主要品種の一つ。
石灰質を含む土壌をもつためドイツよりもミネラル感が強く、こちらも辛口で造られることが多いです。
醸造法もフランス的でアルコール度数が若干高く、丸みを感じる味わいになります。
ドイツのような格付けはないものの、遅積みor貴腐によって糖度をあげたブドウから甘口タイプも造られています。
オーストラリア
オーストラリアはリースリングの産地としては温暖で生産量も多くありませんが、温暖な気候らしいライムの香りを持つワインが造られています。
冷涼な産地よりも酸は穏やかですが、リースリングらしさを生かした辛口タイプが多いです。
特にクレアヴァレーとイーデンヴァレーで多く栽培されていて、フレッシュな果実味とフルーツ、トーストや蜂の巣の風味など、いかにもニューワールドらしいリースリングを楽しめます。
リースリングに合わせるオススメ料理
- 甘口ならデザートと一緒に
- 辛口ならソーセージのような加工肉料理
- アロマティック品種でありながら和食との相性もいい
リースリングは酸味と甘みのバランスがいいので、様々な食事と合わせることができます。
クセの少ない白身魚や豚肉の料理や、マロラクティック品種であることを生かしてタイ料理や中華料理などのスパイシーな料理とも合わせられます。
和食との相性がいいことでも有名ですね。
ドイツ原産なので、同じくドイツ名産のソーセージとの相性もバッチリ。
甘口タイプは同じく甘いデザートと合わせられる他、ブルーチーズなどの塩味の強い食べ物との組み合わせも鉄板です。
料理とワインのペアリングについては「【ワインと料理の組み合わせ方】初心者でもできる!上手なマリアージュの5つのコツ」で詳しく解説しています。
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リースリングの由来
ドイツ・ライン川流域原産と考えられる
現時点でリースリングはドイツ・ライン川流域が原産と考えられていますが、交配元の生息地域から推測するとそれ以外の地域が原産である可能性もあります。
グエブランの子
リースリングの片親はグエブランという品種であることが分かっています。
グエブランは現在ほとんど残っていませんが、かつてはフランスなどでも広く栽培されていました。
グエブランはシャルドネやガメイの親でもあるので、リースリングもこれらの品種と兄弟関係にあたります。
リースリングから生まれた主な交配品種
ケルナー
「ドイツで生まれた交配品種の最高傑作」と言われるケルナーは、リースリングとトロリンガーの交配品種です。
現在は日本の北海道などでも栽培されています。
○○リースリングという名前だけどリースリングと関係ない品種たち
ブドウ品種の中には「○○リースリング」という名前を持つものがいくつかありますが、リースリングと血縁関係がないものも多いです。
リースリングと関係ない○○リースリング
- ヴェルシュリースリング
- リースリングイタリコ
- ウェルシュリースリング
- オラスリースリング
- ラスキリースリング
- シュヴァルツリースリング
- ケープリースリング
- グレーリースリング
リースリングを使ったオススメワイン
晩酌に最適なデイリーワイン
記念日や贈り物にオススメなちょっといいワイン
こだわりの高級ワイン
最後に
- シャルドネ、ソーヴィニヨンブランと並ぶ白ワイン用ブドウの三大品種
- 上品な酸味と白い花やハチミツなどの甘い香り&ペトロール香
- 高品質なリースリングの条件は冷涼な気候と水はけのいいやせた土壌
- アロマティック品種なので新樽熟成は行わない
- 特徴的な酸を生かすためマロラクティック発酵は行わない
- テロワールの影響を大きく受けるブドウ品種で、産地ごとに特徴が異なる
- 酸味と甘みのバランスがよく様々な食事と合わせることができる
- ドイツ・ライン川流域原産と考えられるが完全には解明されていない
今回はリースリングについて解説しました。
リースリングはシャルドネやソーヴィニヨンブランと比べると栽培条件が厳しく生産量も少ないため、少しマイナーな印象を受けがちな品種です。
しかし栽培条件を満たしたリースリングのポテンシャルは非常に高く、100年の熟成に耐えうるワインも存在します。
辛口~極甘口、さらにはスパークリングワインまで幅広く活躍するリースリング。
特徴的なペトロール香もリースリングならではなので、飲んだことがない人は是非お試しください。
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