急いで冷やしたいときは?
温度でワインの味って何が変わる?
今回は冷蔵庫を使ってワインの飲用温度を調整する方法を解説します。
「赤ワインは常温で、白ワインは冷やして飲むんでしょ?」
よく言いますね。これは正しいんですが、正しくありません。
常温って何℃?冷やすってどのくらい冷やすの?
とても曖昧です。
今回は冷蔵庫を使ってワインを最適な飲用温度に調整する方法と、温度によってワインの味わいの何が変わるのかを解説します。
どんな高級ワインでも飲用温度を間違えてしまうと期待外れになるし、デイリーワインでも温度管理ができていれば1ランク上のワインのように非常においしく楽しめます。
自宅でもできるワインの温度管理法を解説するので、是非試してください。
ワインごとの適温
赤ワイン | 飲用温度の目安 |
ライトボディ | 11~14℃ |
ミディアムボディ | 14~16℃ |
フルボディ | 16~18℃ |
高級フルボディ | 18~20℃ |
白ワイン | 飲用温度の目安 |
一般的な辛口 | 8~10℃ |
高級な辛口 | 10~12℃ |
甘口 | 6~8℃ |
ロゼワイン | 飲用温度の目安 |
辛口 | 8~10℃ |
甘口 | 6~8℃ |
スパークリングワイン | 飲用温度の目安 |
総じて | 4~6度 |
かなりざっくりと、タイプ別に飲用温度を表にしました。
表を見ると、
重たいワイン・高級ワイン=温度が高め
であることが分かりますね。
「どれが重いとか酸が強いとかわかりません!」
というときは、赤はミディアムボディ、白は一般的な辛口にあわせて飲んでみることからスタートしましょう。
「赤ワインは常温で」なんてよく聞きますが、これはヨーロッパのワイン貯蔵庫にあるときの話。
日本の常温は夏だと暑すぎるし冬だと寒すぎなので、きちんと調整したほうがいいです。
ライトボディやミディアムボディの高価なワインを飲むなら、飲用温度を一段階高くしましょう。
「高価ってどのくらい?」というと…だいたい5000円くらいが目安です。
ちなみにいちいち温度計とかでワインの温度をはかる必要はありません。
こだわりが強い人は温度計も使うのかもしれませんが、温度に気を取られすぎるとワインに向き合えません。
飲用温度はどこまでいってもあくまで目安で、厳密にはワイン一本ごとに適温は異なります。
実際に飲んでみて、「もう少し低いほうがいいな」「もう少し温まるまでゆっくり飲もう」なんて楽しみ方ができるのもワインの楽しいところですね。
冷蔵庫から出す時間で調整する方法
タイプ | 冷蔵庫から出す時間 |
赤:ライトボディ | 冷蔵室:飲む1.5時間前に出す 野菜室:飲む1時間前に出す |
赤:ミディアムボディ | 冷蔵室:飲む2時間前に出す 野菜室:飲む1.5時間前に出す |
赤:フルボディ | 冷蔵室:飲む3時間前に出す 野菜室:飲む2時間前に出す |
赤:高級フルボディ | 長時間冷蔵室に入れるのは避ける |
白:一般的な辛口 | 冷蔵室:飲む直前~30分前 野菜室:飲む直前~15分前 |
白:高級な辛口 | 冷蔵室:15~45分前 野菜室:15~30分前 |
白:甘口 | 冷蔵室:飲む直前~15分前 野菜室:飲む直前 |
スパークリングワイン | 冷蔵室:飲む直前 |
ロゼ:辛口 | 冷蔵庫なら飲む直前~30分前 野菜室なら飲む直前~15分前 |
ロゼ:甘口 | 冷蔵室:飲む直前~15分前 野菜室:飲む直前 |
室温にもよりますが、大体の目安を表にしました。
一般的に冷蔵室は4℃、野菜室は6℃で、部屋に出してから15分で大体1℃上がります(室温23℃のとき)。
このほかにもグラスに注ぐときに1℃上がったりするんですが、必要以上にこだわるとキリがないのでほどほどで。
飲む前日あたりに冷蔵室か野菜室に入れておいて、飲む時間を逆算して常温に出すようにしましょう。
冷蔵庫に入れる時間で調整する
タイプ | 冷蔵庫に入れる時間 |
赤:ライトボディ | 冷蔵庫に60分入れる |
赤:ミディアムボディ | 冷蔵庫に40分入れる |
赤:フルボディ | 冷蔵庫に25分入れる |
赤:高級フルボディ | 冷蔵庫に15分入れる |
白:一般的な辛口 | 冷蔵庫に90分入れる |
白:高級な辛口 | 冷蔵庫に60分入れる |
白:甘口 | 冷蔵庫に180分入れる |
スパークリングワイン | 冷蔵庫に180分入れる |
ロゼ:辛口 | 冷蔵庫に90分入れる |
ロゼ:甘口 | 冷蔵庫に180分入れる |
「前日に冷蔵庫に入れ忘れちゃった!」というときはコッチの方法です。
飲む時間を逆算して冷蔵室にいれましょう。
厳密には、
「冷蔵室のどこに置くのか(冷気が直接あたるのか当たらないのかなど)」
「冷蔵庫の性能・出力」
「冷蔵庫の開け閉めの頻度」
などで変わるのでそれぞれの環境に合わせて何度か試してみてください。
「冷蔵室にワインを入れると15分で1℃下がる」という法則があるので、覚えておくと便利です。
ワインを冷蔵庫に入れるデメリット
- コルクが乾燥する
- ほかの食品のにおい移り
- 扉の開け閉めで状態の悪化
冷蔵庫にワインを入れるデメリットがあるので解説しておきます。
コルクが乾燥する
ワインを保管する適正湿度は70~80%です。
これは湿度でコルクの膨張性を維持してワインを守る意味合いが強いですが、冷蔵庫は「減圧乾燥」といってコルクが乾燥しやすい環境です。
冷蔵庫などに入れておいた野菜などが水気を失って、カラカラになることはよく経験します。 これは冷蔵庫内の温度が下がって、なかの気圧が低くなっていることと関係します。 さらに、庫内の空気は温度が下がるにしたがって、体積を減らそうとするため、圧力が小さくなり、ボックスのなかは空気も水蒸気も少ない「減圧乾燥」の状態になります。
※引用:料理科学の森
コルクが乾燥してしまうとボトルを密閉する力が弱くなり、ワインの状態悪化の原因となります。
1週間程度の期間であれば問題ありませんが、何か月もワインを冷蔵庫に入れるのはやめておきましょう。
ほかの食品のにおい移り
ワインは香りも重要なお酒です。
通常であればボトルはコルクやスクリューキャップで密閉されているので、外部のにおいがワインに移ることはありません。
しかしボトルの近くに非常に香りの強い食材などがあると、ワインの香りに影響が出る場合がまれにあります。
冷蔵庫にワインをいれるときには、香りの強い料理や食材が一緒に入らないように注意しましょう。
扉の開け閉めで状態の悪化
冷蔵庫の戸袋や野菜室にワインを入れる場合、振動がワインの状態を悪化させてしまいます。
ワインは振動によって成分が乱れてしまい、そのまま飲むと雑味が強くまとまりのない味になります。
そのためお店から持ち帰った日に飲むことを避けたい飲み物ですが、開け閉めの振動が伝わりやすい冷蔵庫だと状態がいつまでも安定しません。
ワインを冷蔵庫に入れるときは、最低限の開け閉めにするなど配慮するようにしてください。
ワインセラーとワインクーラーが楽
冷蔵庫を使ったワインの温度管理は
「できなくはないけど結構めんどくさい」
という感じだと思います。
最初のころは頑張って調整してたのに、だんだん面倒になって結局室温のまま飲んじゃう、というのもあるあるですね。
ワインセラーやワインクーラーを使うと時短にもなるので、使い方を紹介しておきます。
ワインセラー
ワインセラーはワインを保管するためにあります。
ワインの適正な保管温度は15℃前後とされています。
ここまで解説してきたのは飲用温度の話で、保管温度ではないので違いに注意してください。
ワインの熟成を目的としたときには、瓶内の酵母がきちんと活動する必要があり、温度が低すぎると酵母の活動が止まってしまいます。
逆に高すぎるとワインの品質自体に影響が出てしまうので、15℃前後の温度が都合がいいとされます。
しかし熟成を目的としていない場合はこの限りではなく、ワインセラーを飲用温度に設定してワインを入れておいてもOK。
温度を2種類設定できるタイプのワインセラーであれば、赤ワインを入れるところは15℃、白ワインを入れるところは8℃、みたいなことができて便利です。
もし温度が1種類しか設定できないタイプなら、設定温度は赤ワインに合わせておいて、白ワインは飲む前にワインクーラーで冷やしましょう。
家庭用ワインセラーの選び方は「【デイリーワインも高級ワインも】家庭用ワインセラーを選ぶポイントを解説」で解説しています。
ワインクーラー
氷水を満タンに入れたワインクーラーにワインを入れると、だいたい1分で1℃ワインの温度が下がります。
急いで冷やしたいときは、氷水に塩を大さじ2杯程度入れると、冷却効果はさらに高まります。
※塩を入れると水の氷点が下がるため
そこからさらに氷水に入れたワインをグルグル回すと冷却効果がさらに高まりますが、ワインの状態に影響が出てしまいます。
グルグルまわすのはデリケートな高級ワインには避けて、デイリーワインを手早く飲みたいときくらいにしておきましょう。
ちなみにワインクーラーにワインを入れっぱなしにすると、ワインが必要以上に冷えてしまうことがあります。
室温や入れる氷の量にもよりますが、「今おいしい温度!」と思ったらワインクーラーから出しておくようにしましょう。
ワインクーラーなど、自宅に持っておくと便利なワイングッズは「ワインを自宅で楽しむときに用意したいグッズ5選」をご覧ください。
ワインを冷凍庫に入れるのは危ないです
「冷蔵より冷凍のほうが温度が低いんだから時短になるのでは?」
理屈でいえば正しいです。
タイマーをセットして、100%適正な時間で取り出せるのであれば問題ありません。
しかしもし「出すのを忘れて長時間入れてしまった」なんてことがあると大変です。
スパークリングワインでそんなことをしてしまった日には、瓶が割れてコルクが飛び出してくることもありえるので非常に危険。
ワインを冷蔵庫に入れて安全な時間は15~20分程度とされます。
それ以上は瓶やワインに負担がかかるのでやめておきましょう。
ワインの温度と味わいの関係
この記事の序盤で
酸がシャープなワイン・軽快なワイン・甘いワイン=温度が低め
重たいワイン・高級ワイン=温度が高め
なんて話をしましたが、具体的に温度によってワインの味わいがどうなっていくのかを見ていきましょう。
温度が下がると際立つもの | フレッシュ感 |
第一アロマ(果実香など) | |
第二アロマ(一部) | |
酸味 | |
苦味、渋み | |
繊細さ | |
温度が上がると際立つもの | 香りの広がり |
熟成感、複雑性 | |
甘味 |
フレッシュ感や酸がウリの白ワインは温度が低いほうがよくて、熟成感や複雑性がウリの赤ワイン(特に高級ワイン)は温度が高めのほうがいいのはこれが理由です。
赤ワインの渋みや苦味は、温度が低いと特に感じやすくなって全体のバランスが悪くなります。
「赤ワインは渋い(苦い)から苦手」という人は、高い温度で飲んでみると違った印象を感じ取れるかもしれませんね。
逆に「白ワインは酸っぱい」みたいな苦手意識がある人は、少し高めの温度にすると和らぐので試してみてください。
こうやって自分に合った飲み方を探すのもワインの楽しいところですね。
最後に
今回は冷蔵庫を使ってワインの飲用温度を調整する方法を解説しました。
酸がシャープなワイン・軽快なワイン・甘いワイン=温度が低め
重たいワイン・高級ワイン=温度が高め
ということをまず覚えておいてください。
冷蔵庫を使う温度調整は、「飲む〇時間前に出す」「飲む〇時間前に入れる」の2パターンがありました。
いずれも室温や冷蔵庫の性能によって変わるので、それぞれの環境にあわせて調整してください。
冷凍庫は瓶が割れるなどの危険性があるのでオススメしません。
冷蔵庫を使った温度調整は面倒なので、ワインセラーやワインクーラーを使ったほうが楽です。
ワインセラーを赤ワインの飲用温度に設定しておいて、白ワインはそこからワインクーラーで一気に冷やしましょう。
ワインは温度によって目立つ味わいが変わるので、ワインによって、または自分の好きな味わいに合わせて温度を調整するようにしてください。
いちいち温度調整とかめんどくさい!なんて思うのもわかりますが、これもワインの魅力の一つと思って是非いろいろ試してみてくださいね。
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