- 糖度基準と原産地呼称の格付けが両立している
- ニーダーエスタライヒ州とブルゲンランド州が二大産地(88.2%)
- ノイジードラゼー湖周辺では貴腐ブドウが造られる
- 甘口ワインの糖度基準はKMW糖度を使う
ソムリエ&ワインエキスパート一次試験対策シリーズ。
今回の内容はオーストリアです。
オーストリアの内容はドイツの学習をしてからのほうが掴みやすいので、ドイツの学習がまだの人は下記リンクからチェックするのがオススメです↓↓
・ドイツの新旧ワイン法と生産地域一覧&練習問題
オーストリアはドイツ語圏で、主要品種もドイツと共通するものが多いものの、気候はドイツよりも温暖な地域です。
生産されるワインの8割が国内で消費され、輸出量は多くありません。
ワイン法にドイツと似ている部分があり、試験ではドイツとの違いがしっかり把握できているかがとても重要になります。
今回はオーストリアのポイントをまとめて、最後に練習問題を載せてました。
ドイツ語圏は苦手意識を持つ人が多いですが、基本的なことをしっかり覚えるようにしましょう。
全ての記事にランダムで出題される練習問題がついているので試験学習にうってつけ。
独学・スクール通学を問わず、ソムリエ&ワインエキスパート試験合格を目指す人全員に役立てるようになっています。
詳しくは下記リンクの記事をチェックしてくださいね。
ソムリエ・ワインエキスパート試験はワインの難関試験です。 勉強も大変そうだし、何から手をつけたらいいのかもわからないですよね。 筆者は年末頃から少しずつ勉強をスタートして、年明けからはオンラインスクールも利用しながら一発で合格す[…]
オーストリアワインの歴史のポイント
- 1907年オーストリア最初のワイン法が制定
- 1985年ジエチレングリコール混入事件
- 2003年ヴァインフィアテルD.A.C.発足
オーストリアワインの歴史で特に重要なのはジエチレングリコール混入事件です。
1985年6月27日ジエチレングリコールが添加された1983年産のルスト産ワインが、シュトゥットガルトのスーパーで発見されました。
これによりドイツ保健省がオーストリア和委員消費への注意喚起を発令。
全世界でオーストリアワインが店頭から撤去される事態となります。
当時、世界は甘口ワインブームの真っ只中です。
ドイツとオーストリアの甘口ワインは各国で頻繁に取引されていましたが、これにより輸出市場は壊滅。
その後21世紀に入るまで、オーストリアワインの輸出規模が事件前に戻ることはありませんでした。
この事件をきっかけに、オーストリアでは厳格なワイン法が制定されることになります。
出荷までの全プロセスが徹底的にチェックされるなどして、現在のオーストリアワインが生み出されるようになりました。
主要ブドウ品種
- 白ブドウ26種、黒ブドウ14種の計40種が認可されている
- グリュナーヴェルトリーナーの栽培量が圧倒的に多い(全体の1/3を占める)
オーストリアのブドウは「グリュナーヴェルトリーナー」を覚えましょう。
「ツヴァイゲルト」「ブラウフレンキッシュ」はどの産地で栽培されているのかも重要です。
主要ブドウ品種 | 備考 |
Gruner Veltliner グリュナーヴェルトリーナー |
オーストリアで最も重要な固有品種 オーストリアで最も栽培量が多い |
Welschriesling ヴェルシュリースリング |
|
Riesling リースリング |
|
Zweigelt ツヴァイゲルト |
オーストリアの黒ブドウで最も栽培面積が多い |
Blaufrankisch ブラウフレンキッシュ |
|
Blauer Portugieser ブラウアー ポルトゥギーザー |
オーストリアワイン法のキーワード
- 現行ワイン法はEUのワイン法の枠内で運営されている
- ドイツのワイン法と用語が似ているが、相違点に注意
- ドイツの現行ワイン法のように糖度基準の分類と原産地に基づく分類がある
ワイン法のキーワードは「KMW糖度」が重要です。
糖度による格付けはドイツと混ざりやすいので、相違点をよく見ておきましょう。
KMW糖度
- ワインを造る前の果汁糖度を測定した単位
- KMW=Klosterneuburger Mostwaage
品質分類g.U
- さらにクヴァリテーツヴァインとプレディカーツヴァインに区別される
- 原産地保護ワイン
- 単一生産地域内で収穫されたブドウから造られる
- 条件を満たすとカビネットとD.A.C.の表記が可能
- ドイツと異なりカビネットがクヴァリテーツヴァインに属することに注意
Kabinett
- クヴァリテーツヴァインのうち、条件を満たしたものがカビネットを名乗れる
- 最低糖度17°KMW・アルコール13%以下・残糖9g/L以下
- 補糖とワインへの糖分添加不可
D.A.C.
- Districtus Austriae Controllatus
- オーストリア農業地域観光省によって承認されることで名乗れる
- フランスで言うA.O.C.
- 18か所が認定
- さらに3段階に格付けされる
D.A.C.格付け | 備考 |
Gebietswein ゲヴェイツヴァイン |
地域名ワイン |
Ortswein オルツヴァイン |
村名ワイン |
Riedenwein リーデンヴァイン |
単一畑ワイン |
- 特定の製法で造られたクヴァリテーツヴァイン
- 6つのカテゴリーに分類される
- ドイツと似ているので相違点に注意
原料ブドウの違いをよく見ておきましょう。
Pradikatsweinカテゴリー | 備考 |
Spatlese シュペトレーゼ |
完熟したブドウから造る 最低糖度19°KMW |
Auslese アウスレーゼ |
粒より(不適切な果実を排除)したブドウから造る 最低糖度21°KMW |
Beerenauslese ベーレンアウスレーゼ |
過熟または貴腐ブドウから造る 最低糖度25°KMW |
Eiswein アイスヴァイン |
収穫時に凍結したブドウから造る 最低糖度25°KMW |
Strohwein シュトローヴァイン |
Schilfweinともいう 完熟して糖度が高いブドウを藁(シュトロー)や葦(シルフ)の上など空中に浮かせた形で3か月以上乾燥させたブドウから造る 最低糖度25°KMW |
Trockenbeerenauslese トロッケンベーレンアウスレーゼ |
大半が貴腐化したブドウや特に乾燥したブドウから造る 最低糖度30°KMW 自由都市ルストで造ったものはアウスブルッフと呼ぶ |
Ried リード
- 法的に制定された単一畑から生まれるワイン
- Ried○○(畑名)と表記する
品質分類g.g.A
- Landweinと表記
- 地理的表示保護ワイン
- フランスで言うI.G.P.
- 単一のブドウ栽培地方のみのブドウを原料にする
- 認可された40品種のみ使用可
地理的表示なしワイン
- テーブルワイン
- オーストリア国内で収穫されたブドウを原料にする
- ホイリゲの場合はヴィンテージ表記が必須
「ホイリゲ」「ブッシェンシャンク」は試験に頻出のキーワードです。
- 新酒のこと
- ウィーンでは下記ブッシェンシャンクのこともホイリゲという
- 自家生産のワインを提供する居酒屋
- ワイン生産者兼居酒屋の意味
その他のワイン
- 高品質発泡ワイン「オーストリアンゼクト」
- 濁ったワインの「シュトゥルム}
- 微発砲の「ペアルヴァイン」
- 日常消費発泡の「シャウムヴァイン」
- 伝統表記の「ベルクヴァイン」
これまで紹介した以外にも、いくつか重要度の高いワインがあるので見ておきましょう。
オーストリアのその他ワイン | 備考 |
Osterreichischer Sekt g.U オーストリアンゼクトg.U |
オーストリアの発泡ワインのうち、条件を満たしたもの 3段階の品質分類がある |
Strum シュトゥルム |
部分的に発酵したブドウ果汁 発酵途中で濁っているワイン |
Perlwein ペアルヴァイン |
内圧1~2.5バールの弱発泡性ワイン 発酵中、部分的に発酵した果汁、ブドウ果汁、などから造る |
Schaumwein シャウムヴァイン |
アンセストラル方式・シャルマ方式・瓶内二次発酵方式のいずれかから造る発泡性ワイン 内圧3バール以上 |
Bergwein ベルクヴァイン |
オーストリアワインの伝統的表記 傾斜26度を超える段丘や急斜面のブドウ畑から収穫したブドウを使用 |
オーストリアンゼクトg.Uの品質分類
オーストリアンゼクトg.U分類 | 備考 |
Klassik クラシック |
最低9か月滓に触れて熟成 単一州で収穫されたブドウを使用 |
Reserve レゼルヴェ |
最低18か月滓とともに瓶内熟成 瓶内二次発酵 単一州内で収穫・搾汁 |
Große Reserve グローセ レゼルヴェ |
最低30か月滓とともに瓶内熟成 瓶内二次発酵 単一村内で収穫・搾汁 |
主要産地
- 産地は国の東部に集中している
- 特に重要なのはニーダーエスタライヒ州
- 各産地のブドウ品種と特徴を紐づける
主要産地は「ニーダーエスタライヒ」「ブルゲンラント」の2大産地が重要です。
重要なサブリージョンや、主要品種などもしっかり覚えましょう。
Niederosterreich ニーダーエスタライヒ州
- オーストリアワインの6割を生産する
- ヴァッハウはオーストリアで最も有名な産地の一つ
- ドナウ川が流れるオーストリアの銘醸地
- グリューナーフェルトリーナー主体
D.A.C. | 備考 |
Wachau ヴァッハウ |
世界遺産に認定された美しいブドウ畑の景観 グリュナーフェルトリーナーが半分以上 KMW糖度によって3段階に区分される |
Kremstal クレムスタール |
グリュナーフェルトリーナーとリースリング主体 |
Kamptal カンプタール |
グリュナーフェルトリーナーとリースリング主体 |
Weinviertel ヴァインフィアテル |
オーストリア最北・最大面積・最初に認定されたD.A.C. グリュナーフェルトリーナー主体 |
Carnuntum カルヌントゥム |
ツヴァイゲルトの栽培比率が高い 白より赤の生産量が多い産地 |
ヴァッハウ3段階の区分
ヴァッハウ3段階の区分 | 備考 |
Steinfeder シュタインフェーダー |
15°~17°KMW 最も軽い白ワイン 「きゃしゃな野草」という意味のワイン |
Federspiel フェーダーシュピール |
最低糖度17°KMW ヴァッハウの基本となるエレガントなワイン 「鷹狩りの道具」という意味のワイン |
Smaragd スマラクト |
最低糖度18.2°KMW 豊かな果実味と酸が調和した個性的ワイン 「エメラルド色のとかげ」という意味のワイン |
Burgenland ブルゲンラント州
- ノイジードラーセー湖を有し、オーストリアの中でも特に温暖な地域
- 東西最短5kmの細長い産地
- ツヴァイゲルト主体
- オーストリア産の赤ワインの半分を生産する
D.A.C. | 備考 |
Neusiedlersee ノイジードラーゼ |
かつては湖からの霧によって貴腐ワインが造られた 北部は比較的涼しくピノノワールとザンクトラウレントが成功している ザンクトラウレント種の産地としてはオーストリア最高品質 |
Leithaberg ライタベルク |
シャルドネなどを樽発酵・MLF・樽熟成のワインが多い |
Rosalia ロザリア |
オーストリアで最も小さいD.A.C. |
Mittelburgenland ミッテルブルゲンランド |
ブルゲンランド州最初のD.A.C. ブラウフレンキッシュ主体(55%) |
Wien ウィーン州
- オーストリア首都ウィーンを有する
- ゲミシュター・サッツ(混植混醸:さまざまな品種を混ぜて植える畑)が特徴
D.A.C. | 備考 |
Wien ウィーン |
ゲミシュターサッツの白ワインが生まれる |
Steiermark シュタイヤーマルク州
- 州都グラーツはオーストリア第二の大都市
- オーストリアのトスカーナと呼ばれる美しい街並み
- ウィーンではホイリゲと呼ばれる居酒屋をブッシェンシャンクと呼ぶ
D.A.C. | 備考 |
Weststeiermark ヴェストシュタイヤーマルク |
ブラウアーヴィルトバッハー種を早期収穫して造る強烈な酸を持つロゼワイン「シルヒャー」が有名 シルヒャーにはスティルと発泡がある |
オーストリア練習問題
本記事で解説した内容についてランダムで出題される練習問題を作成しました。
何度も挑戦して学習に役立ててください。
最後に
- ドイツワイン法との相違点に注意する
- グリュナーフェルトリーナー種の一大産地
- 主要産地としてはニーダーエスタライヒ州を最優先
- 「KMW糖度」「ホイリゲ」「ブッシェンシャンク」といった特徴的な用語にも注意
オーストリアはドイツ語圏のため、学習もドイツと並行して進めるほうが頭に入りやすい地域だと思います。
ホイリゲってなに?オーストリアの糖度基準は何?など、問題にしやすそうなところは特にチェックするようにしてください。
ソムリエワインエキスパート試験の勉強法はこちら↓
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