今回は赤ワインの女王とも呼ばれる品種、ピノノワールの特徴を解説します。
ピノノワールは「黒い松ぼっくり(Pinot=松ぼっくり、Noir=黒)」という意味です。
最高級ワイン「ロマネコンティ」にも使われていて、世界中にファンがいるブドウ品種。
ピノノワールは他品種とブレンドせず、香り高く、軽やかで強い酸味が特徴のワインになります。
「気難しい」とも表現される栽培条件の厳しさによって、人気のわりに生産量が少なく、ピノノワールのワインは高価なことが多いです。
しかし上質なピノノワールは価格に見合う・またはそれ以上の体験を得られるので、是非試して頂きたいところ。
記事の後半ではピノノワールを使ったオススメワインも紹介しているので、ワイン選びの参考にしてください。
ピノノワールの特徴
- 「赤ワインの女王」とも呼ばれる最上位品種
- ブレンドせず、単一で造られることが多い
- 栽培条件が厳しく、上手に育つ産地が限られる
「赤ワインの女王」とも呼ばれる最上位品種
ピノノワールはカベルネソーヴィニヨンと双璧をなす、世界で最も人気のある黒ブドウ品種です。
カベルネソーヴィニヨンが赤ワインの王なら、ピノノワールは女王。
あの有名なロマネコンティもピノノワール100%で造られています。
ピノノワールの外観
ピノノワールは果皮が少なく、ワインの色味や口当たりに関係するフェノール化合物の含有量が少ないブドウです。
そのためピノノワールを使ったワインの見た目は、大半が透明感のある明るいルビー色。
特徴的な色味のため、ブラインドテイスティングでも外観がピノノワールを判別するヒントになります。
ピノノワールの香り
ピノノワールの最大の魅力であり特徴なのが、バラやスミレのような芳しい香り。
年月が浅いうちはチェリー、ラズベリー、イチゴのような、赤い果実も感じます。
熟成が進むとなめし皮や枯れ葉のような香りも出てきて、複雑性が増していくのも魅力的ですね。
ピノノワールの味わい
ピノノワールで造ったワインはタンニンが少なく軽やかで、若いうちは酸を強く感じます。
ライトボディ~ミディアムボディのエレガントなワインになるので、カベルネソーヴィニヨンの重さ・渋さが苦手な人にもオススメ。
熟成すると強かった酸が落ち着き、味わいの複雑さや奥行きが増していきます。
ブレンドせず、単一で造られることが多い
ワインは悪天候のリスクヘッジや味の幅を持たせるため、ブレンドして作ることも多いです。
しかしピノノワールは基本的に他品種とブレンドせず、単一で造られるのが一般的。
ピノノワールは繊細な香りや複雑な酸味、エレガントさが魅力で、産地や生産者の個性を強く映し出すブドウ品種です。
他品種とブレンドするとそういった個性が薄れてしまうので、「ピノノワールは単一」というのが世界のスタンダードになっているわけですね。
例外としてシャンパーニュなどのスパークリングワインや、一部ブルゴーニュワインには、ピノノワールと他品種をブレンドして造っているものもあります。
ブレンドによるリスクヘッジについては「【ブレンドだけじゃない】メルローの特徴や組み合わせる料理を解説」をご覧ください。
栽培条件が厳しく、上手に育つ産地が限られる
ピノノワールの栽培条件は他品種と比べてもかなり厳しいです。
果実が密着しているため通気性が悪く、カビ起因の病気や天候被害を強くうけてしまいます。
果皮が薄いので日差しに弱く、早熟ですが暑い地域では特徴的な酸が上手く出ません。
そのためピノノワールを上手に育てるには、冷涼な気候でじっくり成熟できることが条件に入ります。
土壌の影響も強くうけてしまうので、石灰質と粘土質のバランスがいい土壌であることも重要。
栽培の難しさから、「ブドウ樹のおてんば娘」なんて呼ばれたりもしています。
ロマネコンティやシャンベルタンなど、超品質ピノノワールを排出するフランス・ブルゴーニュ地方はこれら条件を全て満たしていて、かつてピノノワールは「ブルゴーニュでしか育たないブドウ」とまで言われていました。
病気に弱く、気候や土壌の条件が限られたリスクの高いブドウということで、普通であれば農家さんに敬遠されてしまいそうなものですよね。
しかし上質なピノノワールから造られたワインは一度飲んだら虜になってしまう魔性の味。
栽培の難しさに反して、世界各地の生産者がブルゴーニュ品質のピノノワールを目指して日々技術を磨いています。
ピノノワールの有名な産地
- ブルゴーニュ地方(フランス)
- カリフォルニア州(アメリカ)
- オレゴン州(アメリカ)
- ニュージーランド
ピノノワールの栽培は気温が低かったり、寒流などの影響で冷たい風が吹いたりするなどして、冷涼な気候であることが大切です。
今回紹介する産地以外にも、オーストラリア・タスマニア州や日本の北海道など、冷涼なエリアでピノノワールに挑戦する生産者は年々増えています。
ブルゴーニュ地方(フランス)
ピノノワールの産地といえば、まずはフランスのブルゴーニュ地方です。
中でもコードドール(=黄金の丘)と呼ばれる地域で造られるピノノワールは世界最高峰。
「ロマネコンティ」などの”特級ワイン”も、全てこのコートドールで造られています。
ピノノワールが映し出す土地・生産者の個性(テロワール)を重視する傾向が強く、「道一本挟んだ隣の畑でも全く味わいが違う」なんてことも。
コートドールの中にも細かくエリアが区分けされていて、さらにその中に複数生産者がいるということで、ブルゴーニュワインの多様性は世界最多。
近年価格がどんどん高騰していて手が出しにくくなってきていますが、ブルゴーニュワイン同士で飲み比べるのも楽しい地域です。
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カリフォルニア州(アメリカ)
カリフォルニア州のピノノワールはブルゴーニュに比べるとパワフルで、「カリピノ」と呼ばれたりします。
ブドウ産地の中では温暖で、もともとピノノワールの栽培にはあまり適していませんでした。
しかし栽培技術の進歩や栽培地の選定などにより、近年高品質なピノノワールを生産できるようになっています。
果実味が強く、繊細さよりも分かりやすい味わいのピノノワールが多いのが特徴。
2004年公開の映画「サイドウェイ」でもカリピノが登場し、カリフォルニアでピノノワール栽培が増えたきっかけにもなりました。
カリフォルニアのロマネコンティと呼ばれる「カレラ」や、ブルゴーニュの神様アンリ・ジャイエの元で修行した生産者が立ち上げた「オー・ボン・クリマ」が有名です。
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オレゴン州(アメリカ)
カリフォルニアの北に位置するオレゴン州では、ピノノワールが代表品種として多く栽培されています。
特にウィラメットバレーで造られるピノノワールが高品質で有名。
冷涼でありつつ日照量も多いので、カリピノのようなボリューム感とブルゴーニュのような繊細さ両方を楽しめる味わいになります。
オレゴンのピノノワールは、1979年のブラインドテイスティング会で世界の有名ワインを押さえてTOP10入りし、その翌年には第2位に輝いた実績があります。
ブルゴーニュに近い気候をもつということで注目度があがり、近年はブルゴーニュの生産者もオレゴン州に進出。
近年フランスワインが高騰していますが、オレゴン州なら比較的手ごろでおいしいピノノワールを楽しめるのでオススメです。
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ニュージーランド
ニュージーランドはソーヴィニヨンブランで造る白ワインの産地として有名ですが、赤ワインはピノノワールが主力です。
1日のうちに四季があると言われるほどの激しい寒暖差により、ピノノワールにいい酸味が与えられます。
国の南部は南極が近いので冷涼で、特に世界最南端の産地「セントラル・オタゴ」はピノノワールの栽培に最適。
手ごろな価格でおいしいピノノワールが飲める産地でしたが、ブルゴーニュに負けず劣らずの品質ということで近年人気があがり、価格は高騰してきています。
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ピノノワールに合わせるオススメ料理
- 甘酸っぱいソースの料理
- 軽めな料理
- 熟成したピノノワールにはジビエ系も合う
繊細なピノノワールには味の軽めな料理がオススメです。
ピノノワールの酸にあわせて、甘酸っぱいソースがかかった鴨肉なんてのもいいですね。
また本場ブルゴーニュの郷土料理「コックオーヴァン(鶏肉の赤ワイン煮込み)」は最高の組み合わせの一つでしょう。
熟成したピノノワールにはなめし皮など野性を感じる香りがあるので、ジビエなどもよく合います。
強い味の料理だとピノノワールの繊細さが感じ取れなくなってしまいますが、カリフォルニアのパワフルなピノノワールなら牛肉などにもバッチリです。
料理とワインのペアリングについては「【ワインと料理の組み合わせ方】初心者でもできる!上手なマリアージュの5つのコツ」で詳しく解説しています。
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ピノノワールの歴史や特性など
- フランス・ブルゴーニュ地方が原産
- 突然変異しやすい
フランス・ブルゴーニュ地方が原産
ピノノワールはフランスのブルゴーニュ地方が原産と言われています。
野生種から1~2世代しか離れていない歴史の古い品種で、明確な起源は明らかになっていません。
かつてはMorillon、Noirien、Auvernatなどいろいろな名前で呼ばれていました。
Pinotという名称が残っている最古の記録は、1375年にブルゴーニュ公フィリップ2世が元ベルギーのブルージュに送った文書です。
1934年のシャルル6世の文書で、「収穫の際、ピノノワールが他品種と混ざらないように」という指示があったことからも、このころからピノノワールは最高品質のブドウ品種として扱われていたと考えられています。
突然変異しやすい
ピノノワール(黒いピノ)は突然変異しやすいことも有名です。
有名な変異体としては「ピノグリ(灰色のピノ)」「ピノブラン(白いピノ)」などがあり、これらのDNA型はピノノワールとほぼ同一。
ピノグリやピノブランからピノノワールが生まれることもあるので、外見以外はほとんど同じ品種なのかもしれません。
ピノノワールから生まれた交配品種
中世のフランス北東部では、好立地の畑にピノノワールを植えて、そうではない畑にはグエブランというブドウを栽培していました。
このグエとピノが自然(または人口)交配したことで、いくつかの有名品種が生まれています。
ピノ×グエの有名な交配品種
- シャルドネ
- アリゴテ
- オーセロワ
- ガメイ
- ムロン・ド・ブルゴーニュ(=ミュスカデ)
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南アフリカのピノタージュ
南アフリカでは、当時栽培の難しかったピノノワールにサンソー(現地の呼び名でHermitage)を掛け合わせて、Pinotageという固有品種を作り出しました。
かつては南アフリカの主力品種でしたが、近年は栽培技術の向上によりピノノワールが増えたことでピノタージュは減少傾向。
ピノノワールの香りとサンソーの果実味を両立したようなおいしいワインで、筆者は結構好きな品種です。
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ピノノワールを使ったオススメワイン
晩酌に最適なデイリーワイン
記念日や贈り物にオススメなちょっといいワイン
こだわりの高級ワイン
最後に
- 「赤ワインの女王」とも呼ばれる最上位品種
- ブレンドせず、単一で造られることが多い
- 栽培条件が厳しく、上手に育つ産地が限られる
- 高品質な産地の代表はブルゴーニュ
- 近年はカリフォルニア・オレゴン・ニュージーランドなども評価が高い
- 冷涼なエリアを中心にピノノワールに挑戦する生産者が増えている
- 甘酸っぱいソースだったり軽めな料理と相性がいい
- 熟成したピノノワールにはジビエ系も合う
- 野生種に近く、突然変異しやすい
今回は赤ワインの女王ピノノワールについて解説しました。
上手に育つ産地が限定されているので収量は少ないですが、世界中のファンを虜にする魔性の品種です。
大量生産できないため価格が高いものが多いですが、その価格に恥じない・またはそれ以上の体験をさせてもらえること間違いなし。
一方で安価なピノノワールはガッカリすることも多いです。
普段デイリーワインを楽しむ人も、ピノノワールのワインを選ぶときだけは価格よりも品質を重視して選んでくださいね。
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