ソムリエ&ワインエキスパート二次試験ではブラインドテイスティングでワインを評価するテイスティング試験が行われます。
この試験で重要なのは「その項目で何を聞かれているのか」をしっかり知って、適切なコメントを選んでいくことです。
【無難が一番】二次試験対策に特化したテイスティング勉強法
今回はそのなかでも白ワインに注目して、テイスティング試験の各項目についてコメントの選び方を解説しました。
白ワインでは特に、樽熟成orステンレスタンク熟成とニュートラル品種orアロマティック品種を判別することが重要です。
この記事は試験対策のテイスティングを理解できる内容になっていますので、是非最後まで読んで日々のトレーニングに役立ててください。
本番の解答用紙に同じ選択肢がない可能性もありますので、その場合は同じような意味のコメントを選ぶようにしてください。
外観
- 香りや味わいと連動する
- 粘性は何よりも重要
外観はこの後に評価する香りと味わいに連動する部分が多く、正確に評価することが非常に大切な項目です。
特に粘性は紐づくものが多いので、日ごろから飲むワインの粘性を確認する癖をつけておきましょう。
一方で清澄度や輝きなど、試験に出題しやすいワインを推測すると選ぶコメントが決まっているものもあります。
悩まずに解答できるところは積極的に楽をして、重要部分に意識を注ぐようにしましょう。
外観を評価する際には白い背景を背にして確認すると正確な評価が行いやすくなります。
普段のトレーニングの際にも、白いナプキンなどを用意するように癖付けておくといいですね。
清澄度と輝きは固定
- 清澄度は「澄んでいる」
- 輝きは「輝きのある」
外観の評価の中で、清澄度と輝きは選ぶコメントが決まっている項目です。
この項目はいずれもワインの健全度を表していて、澄んでいないワインや輝きのないワインはどこか不健康であると考えることができます。
そういったイレギュラー要素を持つワインを狙って全試験会場に揃えて出題することは難しいですよね。
試験に出題されるのは同じ状態のものを揃えやすい健全なワインが選ばれやすく、そのワインは「澄んでいる」し「輝いている」というわけですね。
ペットナットなど通常の状態でも濁ったワインもありますが、そういったワインは流通に耐えられない可能性もあるためやはり出題の可能性は低いでしょう。
色調
- 産地を大まかに予測する
- 緑がかっていたら冷涼
- イエローが強いなら温暖または熟した印象や熟す品種
色調は香りの評価に紐づく項目です。
基本的には緑がかっていれば冷涼な地域、イエローが強くなるにつれて温暖な地域(または熟したブドウ・熟しやすい品種)となります。
現代では温暖化の影響や醸造技術の向上により、必ずしもこれらが当てはまらなくなってきていますが、試験に出題されるワインは比較的産地と色調が紐づいたものが選ばれる傾向にあるようです。
テイスティング評価の一番最後に生産国を当てる項目があるので、その際には色調も重要な要素として参考にしましょう。
濃淡
- 単純に色が濃いか薄いかだけ
- 「淡い」or「やや濃い」で選択
濃淡で聞かれていることは、単純に色が「濃い」か「淡い」かです。
どの程度が淡く、どの程度が濃いのかはたくさんのワインを確認して評価基準を身に着ける必要があります。
筆者の経験上では、緑がかったワインは淡い色合いであることが多いですね。
粘性
- アルコール・アタック・余韻と連動
- グラスを傾けてグラスについた液体が伝う速度
外観で絶対外してはならないのがこの粘性です。
粘性はグラスを一度傾けて縦に戻した際にグラスを伝う液体の様子で確認します。
この後評価するアルコール度数・アタック・余韻(例外もある)と連動するため、この粘性を正しく評価できるかどうかは得点に大きく影響します。
粘性は原料ブドウの成熟度(糖度)が高くなることで高くなり、その高い糖度から作られたワイン(ドライワイン)は必然的にアルコール度数も高くなります。
そして成熟度の高いブドウから作られたワインはアタックが強くなり、余韻も長くなることが多いというのがこの考え方の根本です。
近年温暖化の影響でブドウの成熟度が上がりやすいため、アルコール度数は13%を標準とする人が多いようです。
アルコール13%程度のワインの粘性を確認し、それが「中程度」の粘性であることを覚えましょう。
それより弱ければ(アルコール12%台以下)「やや弱め」、それより強ければ(14%台以上)「やや強め」と表現します。
ワインを飲むたびにアルコール度数と粘性を確認する癖をつけておくと、粘性の評価能力をトレーニングすることができてオススメです。
また13%程度の粘性と判断しても、試験本番の解答用紙に「中程度」の選択肢がない場合も考えられます。
その場合は「やや強い」「やや弱い」どちらでも正解になりますが、色調との連動も参考にするとより正解に近づくでしょう。
色調と連動させる場合にはグリーンが強ければ冷涼なので粘性は「やや弱い」、イエローが強ければ温暖で成熟するので粘性は「やや強い」、というように評価していきます。
外観の印象
- グリーンがかっていたら「若々しい」「軽快な」
- イエローが強い場合には「成熟度が高い」
- 樽熟成が強くなると色がイエローに寄るので「成熟度が高い」を選ぶ
外観の印象は色調によってある程度解答が決まっています。
グリーンの印象が強いワインは若々しくフレッシュなワインであることが多いので、「若々しい」や「軽快な」。
イエローが強くなるとブドウの成熟度が高いことを意味するため、「成熟度が高い」といった評価を選びます。
また冷涼な地域であったとしても、樽熟成したシャルドネは若干イエローに寄った色調になるため、この場合も「成熟度が高い」を選んでおきましょう。
ちなみに酸化・熟成に関係する印象については、試験に出題されやすいワインを考えると選ぶことはほとんどありません。
よほど黄金色(熟成感を表す色)が強い場合を除いて、これらの選択肢は選択しないようにしておきましょう。
香り
- ニュートラル、樽熟成、アロマティック系の判別を確実に
- 外観と連動させる
香りの評価で聞かれているのは、そのワインがニュートラル系なのか、樽熟成なのか、アロマティック系品種なのかです。
それらが判別できたら、あとは外観の色調と連動させて選択肢を選んでいけば問題ありません。
香りの第一印象
- 基本的には「開いている」「華やかな」から選ぶ
- 樽の印象がある場合は「強い」でもいい
香りの第一印象では「開いている」「華やかな」というような、香りをしっかり感じられる印象の評価を選びます。
試験に出題されやすい2000~3000円台のワインを考えると、基本的には香りは開いているからですね。
リースリングは温度が低いと閉じ気味に感じることもありますが、少しでも悩んだら「開いている」を選ぶほうが安全です。
ちなみに樽熟成したシャルドネの場合には「強い」で表現することもできます。
解答用紙の選択肢から適したものを選ぶようにしてください。
果実・花・植物の印象
- 外観の色調と連動させる
- 迷ったらグリーン寄りのコメントを選ぶ
- リースリングと断定できた場合は「菩提樹」を入れる
香りの評価で難しく感じるのがここです。
人によっては嗅いだことも見たこともない花の香りをコメントしないといけないこともあるでしょう。
しかし実はこの項目、外観と連動させることである程度機械的に選ぶことができるので是非覚えてください。
花の印象は冷涼な印象から「すいかずら」<「アカシア」<「キンモクセイ」の順、果物の印象は「かんきつ類」「青りんご」<「りんご」「洋ナシ」<「白桃」となっていきます。
そして樽熟成ワインの場合には樽の印象を「アーモンド」で表現し、樽由来の甘味を感じるため少し温暖な表現を選びます。
例外としてリースリングと判断した場合には、特徴的なガソリン香(ぺトロール香)を「菩提樹」と表現する必要があります。
結論でブドウ品種をリースリングとしたにもかかわらず、この「菩提樹」の香りをコメントしていないと一貫性に欠けてしまうので注意してくださいね。
一方で「菩提樹」とコメントしたのにそのワインがリースリングではなかった場合、そのコメントは不正解となっていまいます。
「絶対にそうだ」という自信がある場合以外は基本的な色調との紐づけを優先したほうが安全ですね。
香辛料・芳香・化学物質
- 樽熟成をしているかしていないかを聞かれている
ここでは基本的に、樽熟成をしているのかorステンレスタンク熟成をしているのかを聞かれています。
樽熟成していると判断した場合には樽の印象を、そうでない場合にはミネラルの印象を表現するようにしましょう。
またソーヴィニヨンブランの特徴的な香りを「麝香」の香り、シュールリー製法のワインを「パンドゥミー」の香りと表現することもできます。
しかしリースリングの「菩提樹」と同様、確実に判別できた場合を除いて、こういった専用キーワードのようなものは選ばずにミネラルか樽かで表現してしまうほうが安全でしょう。
もちろん絶対の自信がある場合には、それぞれの専用キーワードを選んで表現したほうが高得点となることは間違いありません。
品種によってはコリアンダーなど特徴的な香りを持つものもありますが、基本的には樽かステンレスかの選択で手堅くコメントするほうが失敗は少ないです。
- 火打石
- 石灰
- 貝殻
- トースト
- ヴァニラ
- バター
- 加えて一つはミネラル表現を入れる
- パンドゥミー
- 麝香
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香りの印象
- 樽熟成?ニュートラル?アロマティックか?
香りの総合評価では樽熟成の有無・アロマティック品種か・どちらでもないかを聞かれています。
試験では樽熟成かorそうでないかでコメントを選んでいくことが手堅くて簡単ですね。
- 若々しい
- 第一アロマが強い
- 木樽からのニュアンス
味わい
- 粘性とアタック、アルコールを連動させる
- 最大値と最小値は避ける
外観と香りの評価が終わると、いよいよ味わいです。
ここまでくればある程度解答も定まってくるので、ゴールは目前。
ちなみに試験の味わい表現では、最大表現と最小表現は避けたほうがいいとされています。
最小表現はネガティブな印象に、最大表現は大げさ・もっと強いものが世の中にはある(それを出題者が経験している)のような受け取り方をされる場合があるためですね。
これまでの外観・香りの表現と一貫性を持たせることに注意しながらコメントを選んできましょう。
アタック
- 粘性と連動させて選ぶ
アタックは粘性と連動させましょう。
粘性が「やや強い」なら、アタックも「やや強い」。粘性が「やや弱い」ならアタックも「やや弱い」と表現します。
甘味
- ドライワインの場合は「ドライ」「まろやか」を選ぶ
試験ではドライワインの出題がほとんどで、甘口ワインはその他酒類で酒精強化ワインが出題される可能性が高いです。
ドライワインは残糖による甘味ではなく果実や樽由来の甘味になるため、「ドライな」「まろやかな」のようなコメントで表現してください。
酸味
- 色調と連動する
酸味は色調と連動します。
冷涼な地域では酸が鋭く、温暖な地域では酸が優しくなる代わりに糖度が上がるからですね。
リースリングなどストレートな酸が特徴的な品種もありますが、基本的には色調と連動させておくほうが安全です。
- 爽やか
- 柔らかな
- やさしい
苦味
- 「控え目な」「穏やかな」から選ぶ
苦味は品種や産地で差が出やすい部分ですが、試験では「控え目」「穏やか」といったあまり強くない表現を選ぶほうが安全です。
白ワインで強い苦味の表現をすることはネガティブに取られることもありリスクが大きいからですね。
よほど苦みの強い品種やワインが出題された場合には、「うまみ(コク)を伴った苦味」と表現することもありますので、頭の片隅に置いておきましょう。
味わいのバランス
- ステンレス熟成か樽熟成か
バランスはそのワインがステンレスタンク熟成か樽熟成か(または色調)で選択肢が決まります。
酸味の評価と考え方は近いですね。
「芳醇な」や「厚みのある」の表現はアルコール度数が特に高くねっとりしたワインや、一部のアロマティック品種に用いられる表現です
- 溌溂な
- ドライな
- 「まろやかな」
アルコール
- 粘性と連動させて選ぶ
- 13%台は中程度で、それより強いか弱いか
アルコール度数はアタックと同様、粘性と連動させる項目です。
粘性が「やや強い」なら、アルコール度数も「やや強い」。粘性が「やや弱い」ならアルコール度数も「やや弱い」を選んでください。
日ごろからラベルに書かれたアルコール度数とワインの粘性を確認する癖をつけて、粘性から正しくアルコール度数を導き出せるようにしておくことが二次試験合格の近道になります。
余韻
- 基本的に粘性と連動させる
- 中程度~やや長いになることが多い
品種によりますが、基本的には余韻も粘性と連動します。
粘性が強くても余韻は短いワインも存在しますが、少しでも迷ったら粘性と連動させるようにしてください。
総合評価
- シンプル、フレッシュ感を楽しむ
- 成熟度が高く豊か
総合評価では樽熟成かステンレスタンク熟成か+色調で評価を変えていきます。
ステンレスタンク熟成で色調がレモンイエローの場合には「シンプル、フレッシュ感を楽しむ」、樽熟成やイエローの印象が強い場合には「成熟度が高く豊か」を選びましょう。
試験では基本的にそのほかの選択肢を選ぶことはありません。
適正温度
- 8-10度固定
試験に出題される価格帯の白ワインでは8-10度が適正となる場合がほとんどです。
グラス
- 中ぶりな
試験に出題される価格帯の白ワインでは中ぶりなグラスを選ぶことがほとんどです。
結論
- 生産地・品種・収穫年はわからなくても気にしない
- いざとなったらフランスを選ぶ
温暖化や醸造技術の発展によって世界中で様々なワインが作られるため、ブラインドテイスティングで正確に生産国や収穫年を当てることは不可能です。
ギリギリ品種はわかるかもしれませんが、恐らく品種もわからない場合のほうが多いでしょう。
ここまで来たらあとは自分が「これかな?」と思った品種を遊び感覚で選んだほうがよさそうです。
過去の出題傾向から考えて、生産国はフランスを選んでおくと正解率は高いかもしれませんね。
詳しく勉強したい人におすすめの本
今回紹介したような、「試験対策に特化したテイスティングコメント」について詳しく解説している本があるので紹介しておきます。
「富田葉子のテイスティング 虎の巻 2021-2022年版: J.S.A.ソムリエ・ワインエキスパート 二次試験対策」では、国内最大手ワインスクール・アカデミーデュヴァンの講師も務める富田葉子先生が、試験に特化したテイスティングコメントの選び方を解説してくれています。
本記事で解説したような内容を、試験に出題される主要品種をすべて網羅。
試験本番の環境や、当日試験に臨む際のコツまで解説してあって、まさにスクールに通って習うようなことを知ることができます。
試験対策の強い味方になると思うので、ぜひ一読してみてください。
実際にテイスティングしてみよう
テイスティングコメントの選び方がなんとなくわかったら、実際にワインを飲んでみましょう。
オススメは国内最大手ワインスクールのアカデミーデュヴァンが販売している、テイスティング試験対策に特化したワインセット。
ブラインド試験で出題されやすいワインだけでなく、それぞれに解説動画がついているので試験勉強にバッチリです。
独学での受験を考えている人には特にありがたいですね。
今回は白ワインのセットを紹介するので、ぜひ活用してください。
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最後に
- 連動する項目を意識して一貫性を持たせる
- 基本はステンレス熟成かor樽熟成か
- アロマティック系品種は判別できたら専用キーワードを入れる
白ワインテイスティングの試験対策は、ステンレス熟成か樽熟成かを判別することが第一です。
そのうえで正しく色調や粘性を判断し、キーワードを紐づけて選んでいくことで評価に一貫性が生まれ、結果として失点を抑えて合格することができます。
外観の印象については何種類かワインを確認して訓練する必要がありますが、それさえクリアしてしまえば香りや味わいは外観の印象から導き出せます。
日々のワインライフでも訓練しやすい項目なので、是非意識して取り組んでください。
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